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第228回 デジタル時代の投票促進~「センキョ割」が示す新しい可能性~

2025/07/17

先日参議院選挙が公示になりました。
今まで少数政党だったところが大幅に議席を伸ばすような報道が出ている一方で、議席を伸ばしそうな政党への批判記事が出ることも確かです。
報道がどこまで真実で、どこまでデマで、どこまで憶測なのかを論じるとキリがありませんが、少なくとも、これまで選挙に行かなかった人(ワカモノや無党派層)が、SNSやネット報道を見て、選挙に行くという人が増えているのは(体感ベースですが)間違いないと思います。

兵庫県知事選挙のときにも書きましたが、SNSやネットに出ている情報を判断するのは選挙民です。
世間のムーブメントに流される場合もあれば、新聞テレビ報道など全く気にせず、投票行動を起こすのも選挙民。
SNS時代の特徴かもしれませんが、「わかりやすさ」が一つのキーになっているのは確かです。
ただ、これだけインターネットによる選挙運動が活発になっているのに、相変わらず投票率は上がりません。
前回2022年の参院選は52.05%、2024年の衆院選は53.85%という水準で、特に若年層の投票率の低さが課題となっています。
オンライン投票導入で投票率が変わるような話も出ますが、果たしてどこまで効果があるかは疑問です。
また、ネット投票はいろいろ検討しないと、投票行動の自由が侵害される可能性もあります。
ただ、どうやったら投票率が上がるかを、いろいろ考えていくのは大事なことです。
期日前投票は年々利用者が増加しており、全投票者に占める期日前投票者の割合が3割を超え4割に迫る状況となっています。
デジタル技術の活用で投票しやすい環境整備は着実に進んでいます。

最近、LINEヤフーがYahoo!ショッピングで「センキョ割」を実施すると発表しました。
参院選に合わせて最大1000円相当の電子クーポンを配布するもので、ECサービスでは初の試みです。
こうした取り組みはどんどんやればいいと思います。
もともとは飲食店などが賛同して割引サービスが受けられるのが最初でした。
このセンキョ割は現在では全国600店舗以上が参加し、猿田彦珈琲やサンリオピューロランド、家電量販店のノジマなど多様な業態が加わっています。
ノジマでは「1140(イイセンキョ)」円分のポイント還元、箱根小涌園ユネッサンでは水着で遊べる温泉の特別料金など、ユニークな特典を用意しています。
投票した大人だけでなく、一緒についていった子供さんにも特典があるのもいいことです(実際そうなっています)。
子供のうちから親が選挙に行くという姿を植え付けておくことは大事だと思います。
18歳未満の方も模擬投票アプリを使えば特典を受けられる仕組みもあり、将来の有権者への教育効果も期待できます。

以前この「センキョ割」について、神戸大の品田裕教授(投票行動論)が「企業がイベント的な要素を取り入れて投票を呼びかけることは意義があるが、効果は不透明だ。
選挙への関心を高めるには、学校での教育を含めた地道な取り組みも必要だ」と語ったことが日経に載っていました。
私も同じように思います。
センキョ割は2012年から始まり、現在では教科書にも掲載され、小学校から大学まで主権者教育の教材として活用されています。
ドイツやルーマニア、イギリス、韓国にも輸出されるなど、国際的にも注目される取り組みに発展しました。

デジタル技術を活用した投票促進は、従来の手法では届かなかった層にアプローチする可能性を広げています。
SNSでの情報発信から、電子クーポンやポイント還元まで、オンラインとオフラインを組み合わせた新しい仕組みが次々と生まれています。
選挙は絶対行くべきだと思いますし、その投票促進にSNSやeコマースが活用されるのは、時代の流れにかなってとてもいいことだと思います。
デジタル技術を使った投票促進は、これまでアプローチできなかった層に選挙参加のきっかけを提供する可能性を秘めています。
一方で、特典目当ての投票が増えることへの懸念もあります。
しかし、きっかけは何であれ、投票所に足を運び、候補者や政策について考える機会を持つことの意義は大きいのではないでしょうか。
デジタル時代の民主主義は、従来の枠組みを超えた新しいアプローチを求めています。
センキョ割のような草の根の取り組みから、オンライン投票のような制度的な変革まで、多様な試行錯誤を通じて、より多くの人が政治に参加できる環境を作っていくことが重要だと感じた今日この頃です。

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