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益田 和久

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第271回 営業の属人化解消と「リアルタイムAI」〜意思決定を支えるパートナーとしての活用法〜

2026/05/14

先日、日本経済新聞に「営業AIエージェント、商談でリアルタイム助言」という大変興味深い記事が掲載されました。
Sapeet(サピート)という企業が開発した「リアルタイム商談サポート」というサービスに関する内容です。
この記事によると、AIが過去の商談データを解析して事前にチェックリストを作成するだけでなく、なんとオンライン商談の最中にAIが会話の裏側で聞き取りを行い、「顧客に聞くべきことを聞けているか」などを画面上でリアルタイムに提案してくれるそうです。
さらには、商談の成約を妨げがちな「営業担当者の話しすぎ」の予防や、商談後の議事録作成、振り返り、勝ちパターンの蓄積まで自動で行ってくれるといいます。

弊社でも、顧客企業の営業部門から「営業業務の標準化」についてご相談をいただく機会が時々あります。
営業部門が抱える最大の課題は、他の多くの業務と同様に「属人化」です。
特定の優秀な営業マンの個人の力量に頼ってしまっている状態から脱却し、組織全体のボトムアップを図ることが急務となっています。
一般的に「業務標準化」とは、うまくやれているハイパフォーマーのやり方を抽出し、他の人でも再現できるようにすることです。

そのため、多くの企業が営業マニュアルやトークスクリプト、ヒアリングの手順書などを一生懸命作成します。
しかし、現実はそう簡単ではありません。
誰もがマニュアル通りに実践できるわけではなく、何よりお客様のタイプや抱える課題は千差万別です。
こちらの想定通りに商談が進むことのほうが珍しいくらいでしょう。

従来の手法では、うまくいかなかった商談について、後からチェックリストを用いて振り返り、「次はこうしよう」と改善に活かすのが関の山でした。
しかし、これでは目の前の商談自体は失注という「損失」になってしまいます。
だからこそ、今回の記事にあった「リアルタイムできちんと履行できる仕組み」は画期的です。
商談の最中に、AIが会話の不足分や次に提案すべき内容をアドバイスしてくれるのですから、現場の担当者からすれば、まるで百戦錬磨のベテラン上司が隣に座って的確なフォローをしてくれているような安心感があるはずです。

現在、オンライン商談はもちろんのこと、対面の商談であってもPCを開きながらお話しするスタイルがすっかり標準化しました。
あとは、AIからのアドバイス画面(いわばカンペ)をお客様から見えないようにどううまく表示させるか、といったツールや画面の見せ方次第で、非常に強力な武器になると推察します。
使い方に慣れてさえくれば、若手からベテランまで、大きな助けになることは間違いありません。

そして、この記事の中で私が最も共感し、重要だと感じたポイントは、このツールが目指しているのが「営業の現場で働く人の意思決定を助けるための支援ツール」であるという点です。
従来の業務を単にAIで代替し、効率化を図ることだけが目的ではありません。
商談という、人と人が向き合う生々しいコミュニケーションの場において、最後に場の空気を読み、提案の言葉を選び、意思決定を下すのは、あくまで「人間」なのです。

記事の最後にもありましたが、多くの企業がAIを用いて営業プロセスを刷新しようと試行錯誤する中、「担当者がAIを意識せずに業務の中で使えるようにできるかどうか」が、成功の鍵を握っています。
これは、我々が日頃提唱している「新しいツールや制度を導入する際は、現場の抵抗感をなくし、自発的に使いたくなるようなマインドや環境をセットで育む必要がある」という人材育成の鉄則と全く同じです。

どれほど優れたAIツールが登場しても、それを使いこなす「人」の育成が置き去りにされては意味がありません。
テクノロジーの進化を柔軟に受け入れ、良きパートナーとして意思決定の質を高めていく。
そんな「人とツールの最適な協働」を前提とした新しい人材育成のあり方を、お客様と共に模索し続けていきたいと、改めて強く感じる今日この頃です。

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