今年5月「キーエンス」創業期からの幹部とそのパートナーが、兵庫県宝塚市に「254億円を寄付」したニュースが注目を集めました。
高収益・高年収で知られる同社の“強さ”の象徴ともいえる出来事です。
その背景にある成長戦略に改めて目を向けてみたいのであります。
「売上1兆円、海外比率6割超」、キーエンスはこの「驚異的な成果」を、同社はM&Aに依存せずに達成しています。
もちろん近年、ドイツの「CADENAS社」を買収するなど例外もありますが、同社の成長の本質は、あくまで自社の力によるオーガニックグロースにあります。
その原動力は「グローバル直販体制」です。
1985年の米国法人設立以来、世界46ヵ国250拠点において、代理店を介さず専門知識を持つ営業担当者が顧客に直接提案。
日本と同等レベルのコンサルティング営業を提供しています。
このアプローチは、まるで種から果実を育てるような地道なプロセスです。
文化の異なる現地に根を張るには時間も手間もかかりますが、それゆえに、各市場に適応した強固な事業基盤が築かれていくのです。
M&Aが「育った木を移植する」行為だとすれば、キーエンスは「種から自分の庭で育てる」企業。
その手間と愚直さこそが、世界中で同じ価値を届ける“最強の仕組み”を支えているのではないでしょうか。