11月、「ヤマト運輸」が「FPTジャパンホールディングス」と連携し、外国人トラックドライバーの採用・育成に本格着手することを発表しました。
「FPTジャパンホールディングス」は、ベトナム最大のIT企業の「FPTソフトウェア」の日本法人ですが、2027年までにベトナムから毎年100人規模で大型トラックドライバーを採用する計画です。
これは「物流業界」のみならず、日本の労働市場全体に波紋を広げる可能性を秘めています。
注目すべきは、その「育成設計」の丁寧さ。
現地で半年、日本で1年の準備期間を経て、特定技能1号として入社するまでに計1年半。
日本語教育、安全運転教育、文化適応支援まで含めた“オーダーメイド型”の人材投資が行われるのです。
このプロセスには、ヤマトが物流の未来を見据えた本気度が表れています。
背景には、日本の運送業界の「慢性的な人手不足」があります。
ドライバーの平均年齢は50歳を超え、若い世代の新規参入も限られている。
2024年問題による労働時間規制も重なり、輸送力の確保は業界の生死を分ける課題となっています。
もはや「賃金を上げれば人が集まる」という単純な構図は崩れており、企業は、採用コストを投じてでも海外に目を向けざるを得ないのが現実でしょう。
この取り組みは、「労働市場のグローバル化」の象徴だといえるでしょう。
特定技能制度の活用により、日本企業は海外人材の“育成力”こそが競争力になるという認識にシフトしつつあるのです。
日本人だけで完結する労働構造はもはや過去のもの。
外国人を「戦力」として迎える覚悟と仕組みが求められているのです。
ヤマトの先行事例が成功すれば、建設、介護、外食など他業界への波及も加速するでしょう。
問われているのは、単なる労働力確保ではなく、いかに共に働き、育ち、定着していけるかという“共生の設計力”なのではないでしょうか。