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高松 秀樹

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第279回:「昇進したくない時代」のマネジメント再設計

2026/04/18

「管理職は罰ゲーム」——この言葉は、もはや一過性の愚痴ではなく、構造問題として語られ始めています。
第一生命経済研究所の調査や、損害保険ジャパンの社内データが示すように、昇進をためらう層は確実に増えています。
その背景には、役割の肥大化と報酬・裁量の不均衡があります。

かつての管理職は「意思決定者」であり「権限の象徴」でした。
しかし現在は、ハラスメント対策やメンタルケア、エンゲージメント向上といった“見えにくい責任”が積み重なり、同時にプレイングマネジャーとしての成果も求められます。
組織のフラット化によって中間層の緩衝機能が弱まる中、一人あたりの負荷は増幅し、「マネジメントに専念できない管理職」という歪んだ像が定着しつつあります。

興味深いのは、損害保険ジャパンが進める「女性リーダーカウンシル」の取り組みです。
70名超の女性管理職が経営に提言するこの仕組みは、単なる多様性推進にとどまりません。
「管理職とは何か」という定義そのものを問い直す試みです。
ロールモデル不在という課題を当事者の声で埋めていくアプローチは、日本企業に欠けていた視点と言えるでしょう。

一方で海外に目を向けると、示唆はさらに明確です。
デンマークでは、管理職は「昇進の結果」ではなく「専門職」として位置づけられ、マネジメントを学んだ人材が担います。
年次ではなく適性と意思が前提となるこの考え方は、日本企業の「いずれ誰もが管理職になる」という暗黙のモデルとは対照的です。
この違いは決定的と言えるでしょう。

では企業は何を変えるべきでしょうか。
第一に、管理職を“役割”から“職種”へと再定義すること。
第二に、評価・報酬体系を見直し、責任とリターンの非対称を是正すること。
そして第三に、管理職以外でもキャリアが成立する複線型人事の確立です。

「罰ゲーム」と言われる組織は、構造が疲弊している証でもあります。
裏を返せば、ここに本気で手を打てる企業こそが、次の時代の人材競争を制する存在になるのではないでしょうか。

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