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高松 秀樹

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第282回:シャドーAIの裏側にある、管理職たちの焦り

2026/05/16

カルビーが「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」など主力商品のパッケージを白黒基調へ切り替える――そんなニュースが話題になっています。 

背景にあるのは、中東情勢の緊迫化によるナフサ不足です。印刷インクの原料となる溶剤や樹脂の供給が不安定となり、同社は“供給継続を最優先”として、パッケージの色数を減らす判断を下しました。 

通常、食品メーカーにとってパッケージは「売り場で目立つため」の重要な武器です。特にスナック菓子の世界では、赤、黄、緑といった強い色彩が購買行動を左右すると言われています。だからこそ今回の“白黒化”は、一見するとかなり大胆な決断に見えます。 

しかし興味深いのは、こうした制約が、逆にブランドを際立たせる可能性もあることです。 

店頭には、色で溢れた商品が並んでいます。その中で、もしカルビーの商品だけが急にモノトーンになったらどうでしょう。人はむしろ「違和感」に目を奪われます。広告業界では昔から、“ノイズの多い場所では、静かなものほど目立つ”と言われます。今回の白黒パッケージには、結果的にそれに近い効果が生まれるかもしれません。 

もちろん、カルビー自身がそれを狙ったわけではないでしょう。今回の本質は、サプライチェーン危機への対応です。ただ、ここに大手企業らしい強さも見えます。 

多くの企業は、有事の際にも「普段通り」を守ろうとして判断が遅れます。デザイン変更は売上への影響も読みにくく、社内調整も大きい。しかしカルビーは、“見た目”より“供給責任”を優先した。これは単なるコスト対応ではなく、「ブランドとは何か」を理解している企業の判断にも見えます。 

本来、ブランドの信頼は「いつもの色」にあるのではなく、“ちゃんと店頭に並び続けること”によって作られるからです。 

さらに面白いのは、この出来事が「平時のデザイン常識」を問い直している点でしょう。企業は長年、「より派手に」「より情報量を多く」と競ってきました。しかし消費者の情報疲れが進む中で、あえて余白を作ることや、引き算の表現が価値を持ち始めています。 

危機対応として始まった白黒パッケージが、結果として「静かな存在感」を獲得する――。そんな逆説が、これからのブランド戦略を象徴しているようにも感じます。 

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