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高松 秀樹

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第236回:地方発の人材投資

2025/06/21

2025年4月に、沖縄に開校した専門学校のありかたが、国内の人材育成と大手企業の関係性に「新たな問い」を投げかけています。

設立したのは、ドイツ発のERP大手「SAPジャパン」。

沖縄ビジネススクール(OBS)専門学校との連携によって、「SAPジャパン主導」の専門学校設置としては国内初の試みです。

リゾートと観光のイメージが強い沖縄県ですが、実は近年、若年層の進学・就職ニーズと企業のIT人材不足のギャップが拡大している地域の一つでもあります。

「SAP」が沖縄を選んだ理由は、単なる地方展開ではなく、日本企業の「IT人材の空洞化」という構造的な課題に、「ローカルからの突破口」を見出そうという狙いがあるようです。

グローバル企業が、教育を通じて地域の産業基盤にコミットする姿勢は、大手が「資金を出すだけ」の段階から、「人を育てる」フェーズへと移行する姿勢を象徴しているようにも感じます。

特徴的なのは、単に「スキル教育」をする場ではないという点。「SAPジャパン」の現場社員が講師として携わり、企業現場で必要とされる「プロジェクトマネジメント力」「デジタル倫理観」「グローバルコミュニケーション」など、実践的な「職業観」の育成にも力を入れているのです。

課題としては、卒業後の受け皿づくり、地元企業との連携強化、キャリアパスの可視化など、いくつも挙げられるでしょうが、それでも、この取り組みが投げかける問いは明快かと。

「人材不足に嘆くのではなく、地域から育てる選択肢が、いま企業にあるのではないか」と。

「東京発の人材戦略」が限界を迎える中、SAPジャパンが見せた「沖縄発の人材投資」は、これからの大手企業の進むべき道を照らしているのかもしれませんね。