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岩田 徹

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第259回 恩義

2025/12/05

11月23日に千秋楽を迎えた大相撲九州場所。
関脇の安青錦が12勝3敗で初優勝を遂げました。

21歳という若さで初入幕からまだ14場所。
本コラムを記載している段階では大関昇進は決定となっていませんが、
恐らくこの強さ、安定感から大関昇進は確実かと思います。
新入幕から14場所での大関昇進は史上最速。
大相撲にまた新たなスターが誕生しています。
(2025年11月26日に大関昇進が決定しました。)

安青錦関はウクライナ出身。
ご存知の通りウクライナはロシアの侵攻を受け戦争状態。
とてもスポーツをやれる環境ではありません。
路頭に迷う安青錦関に声をかけたのは、
2019年のジュニア相撲世界大会で知り合いになった、
関西大学相撲部の山中新大(あらた)さんでした。
戦況の悪化を心配した山中さんが「大丈夫?」と連絡を取ったのがきっかけ。
安青錦関は「日本に避難できないか?」と相談を投げかけたそうです。
相談を受けた山中さんは周囲に相談。
まずは親御さんに相談し、来日後の下宿先として自宅の提供の許可を獲得。
そして大学の相撲部に掛け合い、来日後の練習場所を確保し、
関西大学相撲部の練習生として安青錦関は2022年に来日。
その後、安治川部屋に入門し、2023年秋場所で初土俵を踏み、
7場所で関取に昇進。ここまででも異例のスピード出世でした。
新入幕の2025年春場所から5場所連続で2桁勝利を飾り初優勝。
一気に相撲界の頂点近くまで駆け上がってきました。

テレビのインタビューでは全く違和感のない日本語でスラスラと答え、
礼儀正しい好青年というイメージを受けました。
出身国であるウクライナの現状。
多くの人の助けがあって実現した来日。そして入門後の努力。
全てから絡み合って成し遂げた初優勝。
安青錦関から出てくる多くの人への感謝の言葉には胸を打たれるものがありますし、
感謝を決して忘れないという強い決心は、
四股名である、安青錦新大(あおにしき あらた)に強く表現されています。
周囲への感謝を肝に銘じ、一心不乱に努力する。
ウクライナの青年と日本の大学生が生み出した物語。
こうした姿勢が多くの支援者を生み出すのだと改めて感じた大相撲九州場所でした。

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