先日、日本経済新聞に掲載された「オンラインカジノ、強制遮断は誰が判断? 問われる『通信の秘密』」という記事が目に留まりました 。
記事によると、違法なオンラインカジノへの接続を強制的に止める「ブロッキング(接続遮断)」の導入可否について、政府の議論が山場を迎えているとのことです 。
スマートフォンを通じて24時間アクセスできるオンラインカジノは若者の間で利用が広がっており 、依存症に陥りやすいという深刻な指摘があります 。
一方で、ブロッキングはネット利用者全員の閲覧先を常時監視することになるため、憲法が保障する「通信の秘密」に抵触し、インターネットの自由と監視を巡る難しい対立が生じています 。
現在、総務省としては包括的な対策の効果を検証する必要があるとして、現時点ではどちらの利益を優先するかの判断を下さない方針のようです 。
人材育成や若者教育に携わる者として、この問題はどうしても他人事とは思えず、今回はあえてこのテーマを取り上げてみました。
実際、私の周囲でも、若者がオンラインカジノにはまって多額の借金を抱えたり、警察のお世話になったりといった耳を疑うような話を耳にすることがあります。
大前提として「本人が自制心を保つこと」は当たり前です。
しかし、それが難しい現状がある以上、社会としてアクセス自体をできなくする仕組みを作るのも、有効な手段の一つではないかと考えていました。
しかし今回の記事を読んで、これがそう簡単な話ではないことを改めて突きつけられました。
通信の秘密という高いハードルがあり、様々な法律の制限が立ちはだかっているからです。
独裁政権の国家であれば、国の一存で一斉にブロッキングを実行できるのでしょう。
それが簡単にできないのが日本の難しさであり、ある意味では個人の権利が守られた法治国家として機能している証拠でもあります。
ただ、記事によれば、児童ポルノサイトのように放置すれば重大な人権侵害につながる場合は、刑法の緊急避難として違法性を問われず遮断が認められているそうです 。
それならば、近年社会問題化し、時に人の命すら奪うような犯罪を誘発する「闇サイト」の類はどうなのでしょうか。
オンラインカジノを含め、仮にアクセスを遮断したとしても、犯罪集団はあらゆる手を使って形を変え、いたちごっこのように新たなサイトを出現させるでしょう。
完全に根絶することは極めて困難かもしれません。
しかし、そこに罰則が伴い、アクセスへの明確な物理的障壁ができれば、間違いなく一定の抑止効果はあるはずです。
私たちが知らないところで、政府や警察による様々な対策は進んでいるのかもしれません。
「手の内を明かさないこと」が最大の防衛策という側面もあるでしょう。
しかし、だからこそ「こういった犯罪対策にどんどん力を入れ、予算を割き、法律を作って厳しく罰していく」という国としての強い姿勢を、もっと社会に向けてアピールすべきではないでしょうか。
思い返せば、かつて社会問題となっていた飲酒運転も、法律が厳罰化されたことで劇的に件数が減りました。
「ルールを厳しくし、環境を変えること」が、結果として人々の行動変容を強力に後押しした好例です。個人の自由を尊重することはもちろん大切ですが、社会全体でこの問題を「自分事」として捉え、犯罪を駆逐し是正していく。
そのきっかけとして、ブロッキングのような強力な「大きな柱」を立てる時期に来ているのではないかと思えてなりません。
これは、企業における人材育成や組織づくりにおいても通じる部分があります。
私たちは普段、「社員の主体性や自律性」を育むための支援を行っています。
しかし、個人の自己規律だけに依存するのには限界があります。
時には、組織として明確なルールや「やってはいけないことの境界線(環境)」を強制的に設定することが、結果的に社員を守り、健全な成長を促す安全な基盤になるのです。
自由と規律のバランスをどう取るか。
変化の激しいデジタル社会において、個人も社会も、何を守るためにどう環境を設計していくべきなのか。
オンラインという便利な道具の影に潜むリスクにしっかりと向き合いながら、本質的な議論を深めていく必要があると感じる今日この頃です。