先日、日本経済新聞に「オンライン職業訓練、非正規雇用に 厚労省が26年度から」という記事が掲載されました 。
厚生労働省が8月にも、非正規雇用の労働者向けにオンラインの職業訓練を始めるという内容です 。
記事によると、期間は原則2ヵ月以上6ヵ月以下で、受講料は5000円(教材費別)とのこと 。
ソフトウェア開発や経理・営業事務などのスキルを、働きながら学びやすい環境で身につけられるようにし、処遇改善や手取り増につなげる狙いがあるといいます 。
人事教育コンサルタントとして日々の現場を見ていると、能力開発や研修の機会が提供されているのは、依然として「正社員のみ」という企業が少なくありません。
今回の記事でも、厚労省の調査において「正社員以外に対して職場外訓練を実施した事業所の割合は31.2%」にとどまり、正社員向けの71.6%と比べて大きな開きがあることが示されていました 。
同じ職場で同じような業務を担っている契約社員の方が、こうした教育格差にハンディキャップを感じてしまうのは想像に難くありません。
一方で、派遣社員として働く方々に対し、派遣元企業が独自のeラーニングなどを提供しているケースも目にします。
派遣という働き方であっても、自らスキルアップを図れば時給が上がり、キャリアの選択肢も広がっていくため、こうした教育機会の提供は非常に素晴らしい取り組みです。
現在の労働市場において、「正規」「非正規」という働き方は一概に二分できるものではありません。
非正規から正規雇用への登用を強く望んで懸命に働いている方もいれば、あえて自分のライフスタイルに合わせて非正規という身分にこだわらない働き方を選択している方もいます。
しかし、どのような立場であれ、能力開発が「不要」になることは決してありません。
そういった意味で、国が主導して非正規雇用の方向けのオンライン訓練を整備するという今回のニュースは、非常に喜ばしい第一歩だと捉えています。従来の公共職業訓練は平日昼間の通学が前提のものが多く、就業者が時間を確保するのが難しいという課題がありましたが 、オンラインという手法を用いることで、その壁を取り払うことができるからです。
ただ、率直に言えば「今までこうした制度がなかったのか」と、社会全体の非正規層への教育に対する関心の低さを改めて思い知らされる部分もあります。
2026年度予算に関連経費として計上されたのは10億円とのことですが 、対象となる方々の規模感を考えれば、初期段階とはいえ少し心許ない額にも感じます。
また、現在の講座内容が「ソフトウエア開発、経理・営業事務」に限られている点も気になります 。
ここから徐々に増やしていく構想なのだと思いますが、現場のリアルなニーズを吸い上げ、より幅広い職種やスキルへと柔軟に対応していく必要があるでしょう。
記事のなかで、先行して実施された試行事業の修了後アンケートにおいて、回答者の15%が「正社員になれたか、賃金水準が向上した」と答えたというデータがありました 。
これは教育支援がもたらした非常にうれしい兆しです。
今後はこうした数値を明確なKPIとして設定し、さらに伸ばしていくための仕組みづくりが求められます。
いずれにしても、学びによって自分自身のステータスを上げ、新たなチャレンジの機会を得られる環境が整うのは素晴らしいことです。
今回のオンライン職業訓練の拡充が、日本の労働市場が真の意味で活性化する良いきっかけになってほしいと、強く感じている今日この頃です。