ハンドルもペダルもない、金色のタクシー。
米テスラが9月11日、無人運転タクシー専用車両「サイバーキャブ」を日本で初公開しました。
2人乗りで、左右のドアは上方に開くバタフライドア。車内には大型モニターを備え、移動中に映像などを楽しめます。未来の乗り物を思わせる姿ですが、テスラによると、すでに米テキサス州オースティンの一部で利用できるそうです。
日本での運行は未定です。それでも、このニュースを見て思い浮かべたのは、高齢者の免許返納の問題でした。
運転に不安を感じても、車がなければ買い物や通院が難しい。家族に送迎を頼むにも、毎回では気が引ける。地方では、そんな事情を抱える方もいるでしょう。
免許を返すことが、行きたい場所へ行く自由を手放すことになってしまう。
自動運転が力を発揮してほしいのは、まさにこうした場面です。
興味深いことに、サイバーキャブは、車いすから座席へ移りやすい高さや、車いすなどを収納できる荷室にも配慮しています。一方、現行サービスでは予約にアプリを使い、本人以外のために配車することはできません。
未来的な車両ができることと、誰もが使いやすい移動手段になること。その間には、まだ工夫の余地があります。
スマートフォンが苦手でも電話で予約できる。乗り降りに困ったら、人の支援を受けられる。病院の診察が長引いても、帰りの足を確保できる。
生活を支えるのは、車の性能と、こうした細かな仕組みの両方なのでしょう。
自治体と交通事業者、技術を持つ企業が協力し、車を所有する維持費と大きく変わらない負担で、必要な時に利用できないものか。
もちろん、利用者が少なく移動距離が長い地域では、採算の難しさがあります。無人運転でも、遠隔での見守りや整備、乗客への対応まで不要になるわけではありません。
だからこそ、地域のバスやタクシーと組み合わせ、暮らしに合う形を探ることが大切です。
通院や買い物だけでなく、友人に会う。好きな店へ出かける。少し遠くの景色を見に行く。
そんな外出まで支えられたら、技術の価値はぐっと大きくなります。
テスラの挑戦が日本でどのように展開されるかは、これからです。安全性を確かめながら、運転する人にも、すでに運転をやめた人にも、選択肢が広がってほしいと思います。
ハンドルを手放しても、暮らしの自由は手放さない。
自動運転が届ける未来が、そんな日常であることを期待したいのであります。