第232回 誰にでも事情がある!を忘れないこと
2025/10/13
組織には、いろんな人がいます。
仕事が早く正確な人もいれば、どうしてもミスが多い人もいる。
明るく前向きに見える人もいれば、どこか元気がない人もいる。
そんなとき、私たちはつい「見えている部分」だけで判断してしまいがちです。
でも、実はその裏には、誰にも言えない『事情』があることもあります。
「やる気がない」本当にそうでしょうか
たとえば、最近こんな社員がいました。
入社して2年目。
もともと仕事は丁寧で信頼も厚かったのですが、ある時期からミスが増え、締切に遅れることも増えてきた。
上司は「気が緩んでるんじゃないか」「やる気がないのか」と注意をしました。
ところが、後になってわかったのは、彼の親御さんが重い病気を抱えていて、余命宣告を受けた直後だったということ。
本人は心の整理がつかず、それでも「迷惑をかけたくない」と出社を続けていたのです。
見えているのは『ミス』という結果だけ。
でも、その背景には、『心が追いついていない状況』が隠れていました。
「根性がない若者」本当にそうでしょうか
入社してたった1週間で辞めたいと申し出た新入社員。
「最近の若者は根性がない」と、つい言いたくなってしまうかもしれません。
でも、退職理由を丁寧に聞いてみると…。
実は、家族の介護を突然担うことになってしまい、「会社に迷惑をかけるぐらいなら辞めた方がいい」と思い込んでいたのです。
本人は決して逃げたかったわけではありません。
「頑張らなきゃ」という思いが強すぎて、自分を責めながら辞める決断をしていたのです。
「そのくらいで休むな」本当にそうでしょうか
そしてもう一人。
少し叱っただけなのに、翌日から出社しなくなった女性社員。
「そんなことで休んでいたら社会人としてやっていけない」と思う人もいるでしょう。
けれど、彼女はとても真面目で、いつも一生懸命。
後からわかったのは、過去のトラウマで『男性の怒鳴り声』に極度に反応してしまうということでした。
本人も克服したくて必死に頑張っていたのです。
表面的な判断ほど、危険なものはない
こうしたことは、どの組織にも起こり得ます。
でも、多くの場合、私たちは「行動」や「結果」だけを見て判断しがち。
「やる気がない」「甘えている」「向いていない」。
でも、「もしかしたら、何か事情があるのかもしれない」この視点を持つだけで、関わり方はまったく変わります。
人は誰でも、自分の立場や経験から物事を見ます。
だからこそ、「相手にも、相手の背景がある」という前提を忘れないことが大切。
もちろん、甘やかすという意味ではありません。
状況を聞いたうえで、どう乗り越えていくかを『一緒に考える』。
このプロセスこそが、信頼関係を育て、成長を生み出すのです。
その関係性ができていれば、社員は「わかってもらえた」と感じ、再び前を向く力を取り戻します。
その積み重ねが、『辞めない人材』『育つ組織』をつくります。
ぜひ、表面ではなく背景に耳を傾け、人が育つ関係性を育てていきましょう。
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