外食各社が原材料費や人件費の上昇に直面し、「一食1000円」が消費者の心理的な壁となるなか、丸亀製麺は堅調な成長を続けています。その理由は、単に価格が安いからではありません。顧客が支払う金額以上の「納得」を、店内体験そのものによって生み出しているからです。
丸亀製麺では、全店舗で粉からうどんを打ち、店内でゆで、天ぷらを揚げています。さらに、試験を通過した「麺職人」を全店に配置しています。一見すると、セントラルキッチンで効率化を進めるチェーン経営とは逆行する仕組みです。しかし、製麺する姿や湯気、音、香りが、「ここで食べる意味」をつくっています。
粟田貴也社長が掲げているのは、「あえての非効率」という考え方です。削減できる手間をあえて残し、その手間を品質への信頼やライブ感へと転換しています。効率を追求する企業が増えるほど、この非効率は模倣しにくい競争力になります。
もちろん、伝統を守るだけではありません。うどん弁当、シェイクうどん、うどーなつなど、既存市場の枠を広げる商品も次々と生み出してきました。守るべき手間は守り、顧客との接点は大胆に変えています。この両立こそ、丸亀製麺が唯一無二のチェーンへ成長した理由です。
企業に必要なのは、すべてを効率化することではありません。顧客が「わざわざ選ぶ理由」まで削っていないでしょうか。丸亀製麺の成長は、非効率の中にこそブランドの源泉が隠れていることを教えてくれます。