HACHIDORI NO HANE(ハチドリのはね)HPトップ

深山 敏郎

ホーム > 深山 敏郎 > 記事一覧 > 第87回 職場組織のレジリエンス(4)ダイバーシティとインクルージョン

第87回 職場組織のレジリエンス(4)ダイバーシティとインクルージョン

2023/02/14

前回は、職場組織、つまり会社単位のレジリエンスの第3回目として「環境変化に対応した組織構造」についてお話してきました。

中小企業には組織を迅速にお客様ニーズに対応するよう変更していくことが必要であるということをお伝えしました。
今回は「ダイバーシティとインクルージョン」というテーマでお話をします。

ダイバーシティとインクルージョンとは

このコラムは、「そもそも」論も多く、カタカナ用語も多く出てくるので筆者としても大変恐縮しています。
今回のテーマもカタカナです。
ただし、この項目は企業としてのレジリエンスに必須の要素なので採り上げました。

「ダイバーシティ」とは多様性という意味で、「インクルージョン」とは難しい言葉では、包摂する、簡単にいえばみんな「仲間」として扱うという意味です。

大企業や自治体でも、女性管理職、取締役などの女性比率が諸外国と比べて極端に低いことが悩みの種になっています。
各組織で改革をしようとしているのですが、まだまだダイバーシティの第一歩を進み始めたというところです。

ダイバーシティの分類(例)

1.「属性」の違い
 ・ジェンダー(性別)
 ※特に女性活躍特に管理職比率向上の支援、LGBTQなど性的マイノリティへの配慮、相互理解促進。
  LGBTQに関しては例えば、トイレやシャワールームの個室化の促進。
 ・人種・国籍・民族・宗教・文化等 
  ※文化的な背景などの尊重、例えば食事、お祈りなどへの配慮。
 ・年齢(特にシニア世代の雇用等)
  ※シニア世代が働き続けやすい環境整備。短時間・週3日勤務等。
 ・身体などの状況(身体・精神・知的障がいなどのハンディキャップ)を個性として尊重。
  ※車いすでの労働がスムーズか。その他のハンディキャップを受容できるか。

2.「労働条件等」の違い
 ・雇用条件(正規社員、非正規社員等)
  ※同一労働同一賃金の原則が守られているか。
 ・働き方(本業、夢をかなえるためのアルバイト等)
  ※多様な働き方への理解は進んでいるか。
 ・働く場所(本社・支社、本部・店舗等)
  ※本社を必要以上に重視していないか。

中小企業でも必須な「ダイバーシティとインクルージョン」

ダイバーシティやインクルージョンを日本の企業、特に中小企業で推進することは容易なことではありません。

しかし、企業が社会から受け容れられ、継続的に発展するためには必要なことなのです。
ぜひ当事者を交えて本格的に話し合いを続けて理想に向かって欲しいと思います。
それが長期的には組織の利益につながります。

ご参考:世界のダイバーシティとインクルージョンの歩み

次世代育成支援対策推進法に基づき、行動計画を策定した企業のうち、行動計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けることができます。
この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」です。
現在約1,800社が認定を受けていますくるみんのデザイン・名称は公募によって、みなさまの声で決められました。(厚生労働省ホームページより)


以下、ご参考までにお伝えしておきます。
世界ではダイバーシティやダイバーシティ・マネジメントをめぐる歴史は以下のような流れを経てきました。
日本ではこれに追随しようとしている段階です。

1.1960年代以前
各国において身分制度、人種、性別による差別があり、多くの国で法律上もダイバーシティが受け入れられていませんでした。

2.1960-70年代
米国において、「公民権運動」(1960年代)が起こり、「公民権法」、「雇用機会均等法」等が整備されるに至りました。
また、1970年代はじめには、「ウーマンリブ」(女性解放)と呼ばれる運動により、ジェンダー(性)への差別に対しても法整備が進みました。
大手企業は1970年代にマイノリティ(黒人女性など)への差別によって、多額の賠償金を支払い、多くの教訓を得て企業運営に生かしました。

3.1980-1990年代
CSR(企業の社会的責任)の一環としてのダイバーシティ受容が米国などで広がりました。
また、米国企業のグローバル化の進展によって、画一的な商品・サービスの開発の限界を悟り、多様化を積極的に受容することが経営戦略としても重視されるようになりました。

4.1990年代後半-現在
米国において女性管理職比率が高まり、ダイバーシティ受容によりさまざまなメリットを得たことで、経営戦略上必須の項目となりました。
投資家が投資する際の指標としても用いられるようになりました。

日本企業においては、形式上のダイバーシティ受容がなされていますが、実質的な受容はこれからのチャレンジです。
また、女性の活躍できる環境の整備が企業の成否を分けつつあります。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
http://miyamacg.com/
toshiro@miyamacg.com