「人材育成=教えること」。
これは、多くの企業に
根深く染みついている既成概念です。
新入社員には先輩社員が丁寧に手取り足取り教える。
マニュアル通りに業務を進めさせる。
研修で知識を詰め込み、定着を図る。
もちろん、初期段階での「教える」行為は必要です。
しかし、ある段階を過ぎたら、
むしろ“教えすぎること”が
人材の成長を妨げる原因になっていることに
気づくべきです。
私はある建設系の会社で、
若手社員の育成に悩む現場リーダーから
相談を受けたことがあります。
「何度説明しても、自分で考えようとしないんです」
「聞いたことしかやらない。応用がきかないんですよね」
詳しく話を聞くと、
マニュアルや指示は非常に整っており、
上司や先輩たちはとても面倒見がよい。
…つまり、「与えすぎていた」のです。
そこで私は
「次からは“答えを教えない”ことを意識してください」
とアドバイスしました。
たとえば、部下に質問されたら、
「君はどう思う?」
「どうやって調べた?」と問い返す。
失敗してもすぐに手を差し伸べず、
「何が原因だったと思う?」と考えさせる。
その結果、最初は戸惑っていた若手も、
数ヶ月後には自分で調べて提案するようになり、
上司が驚くほどの成長を見せました。
「教えない」というのは、
放置することではありません。
“考える余白”を意図的に残すこと。
問いかけること。
任せてみること。
そして、見守り、承認すること。
この「教えない育成」は、
社員の“受け身の学習姿勢”を、
“主体的な学習姿勢”へと変えていきます。
そして、人材育成の本質的なゴールは何でしょうか。
それは、「知識やスキルを習得させること」ではありません。
どんな環境でも、
自ら学び、挑戦し、成長し続ける
マインドを手に入れること。
これこそが、変化の激しい時代において
最も価値ある力です。
あるIT企業では、
上司が部下に「正解」を示すことをやめ、
プロジェクトを“問い”からスタートする
形に切り替えました。
その結果、社員同士の対話が増え、
プロジェクトの提案精度とスピードが明らかに向上。
数値的にも、前年より生産性が
15%上がったという報告がありました。
人を育てるとは、
育てる側が頑張ることではなく、
自ら育つ人を増やす環境をつくることです。
今日からぜひ、
「教えない勇気」を持ってみてください。
それが、育成のステージを一段引き上げ、
組織の底力を高める第一歩になります。
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