メタバース(仮想空間)を使った新卒採用が広がっているようです。
今夏、大手人材サービス会社が主催した ”メタバース合同企業説明会" には、半年前比で約4倍にあたる750社が出展しました。
”メタバース説明会”のメリットは、学生は顔や氏名を明かさず参加でき、企業は本音を引き出しやすいこと。
コロナ禍も収束し少しずつ対面式の採用イベントは復活してきていますが、その前提を踏まえながらもメタバースのニーズは広がっています。
不人気業種ともいわれている飲食や運輸、介護やホテル等はもちろんのこと、若者のクルマ離れが深刻になっている自動車ディーラー等は、メタバースを通じて幅広い学生にアプローチを想定して意欲的に出展しているようです。
メタバース説明会の現場では、就活生がスマホで自分の分身の「アバター」を操作します。
通常の説明会同様、様々な企業のブースを訪問して担当者に質問をしますが、大きな違いは一つ。
自身の名前を明かす必要はないため、対面形式では聞きにくいことも一気にハードルが下がります。
実際に質問を受けた企業担当者も「顔が見えない分、積極的な質問があった」と手応えをつかみました。
ミスマッチの抑止にもつながっていることもあると思います。
メタバース説明会は、展開され始めたばかりですが、先述の通り出展企業の幅も広がってきています。
地域も北海道から九州まで様々で「遠隔地の学生と接触したい」という動機で参加する企業が多かったようです。
コロナ禍を機に広がってきた採用活動のオンライン化。
学生からは多くの支持があるようです。
人材サービス会社の調査によると、就活のオンライン化に賛成と答えた学生は全体の9割以上を占めました。
大きな理由は交通費の削減や同日に複数社応募できることがあります。
確かに交通費はバカになりませんよね。
交通機関の遅れや大雨で、気分が滅入ったという人も一定数いるのではないでしょうか。
場所の制約や移動の制限を受けずに参加できるのがオンライン就活のメリットですが、いいところばかりでもないようです。
「大人数が参加しているビデオ会議では、質問がしづらかった」と感じた学生さんもいたようです。
ビデオ会議では会話の間合いを掴むのが難しいことは、これまで本コラムで何度も書いてきました。
そういう面からすると、話しにくさは大人数も少人数も同じかもしれません。
メタバースは、氏名だけでなく性別や容姿も明かさずに一対一で採用担当者と対話できるので、学生には一定の安心感を与えているのだと思います。
就職活動は、できる限りミスマッチをなくしていくことが求められます。
学生は企業ホームページ、SNSだけではわからないことを遠慮せずに聞きたい。
企業は少しフランクな空間で、”ぶっちゃけた感じ”でアプローチすることで、自社の魅力を少しでも正確に伝えたい。
そのことを促進するために、物理的・精神的なハードルが下がるなら、メタバース就活は大歓迎だと思います。
対面式のイベントも復活してきていますが、コロナ禍で定着してきたオンライン就活を縮小するのではなく、これまで以上に効果的に活用、発展させることが必要だと思います。
メタバース説明会はDX化の流れを加速する絶好のツールではないでしょうか。
アフターコロナになり、コミュニケーションの手法が新しくなってきていることを感じます。
リアルとバーチャル。
対面とオンライン。
いずれにも偏ることなく、コミュニケーションの本質である「共有する、わかちあう」ことが合理的に進められるよう、新たなスキルアップメソッドを考案する必要を感じた今日この頃です。