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星 寿美

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第5回 ファンなってしまうクレーム対応とは?

2021/05/16

私自身の体験談で恐縮です。
30代の頃、社員3名、登録ヘルパー200名の在宅介護会社の社員でした。
育成・調整・クレーム対応など全てを3名の社員で行っていました。

その時、クレームが出たら私、というくらいのクレーム担当だったのです。
そして実は、そのころの私には『クレーム対応』という『概念』がありませんでした。

クレーム対応という概念がなかったから解決できた

とにかく、何か問題が起こると「行って事情を聞いてきてー!」と行かされるのです。
その時の私は「どうしたんだろう?」「何があったんだろう?」と単純に事の成り行きを解明しにいく人だと思っていました。

利用者さん宅に着くと、大抵はすごく怒っていたり、重苦しい雰囲気。
もちろん笑顔なんてありません。

「ひえ〜、怒ってるよ・・・」がまず第一印象。

そこで「この人はどうして怒っているのだろう?」とまず状況を『知りたい』というスイッチが入ります。

そのころの私は、クレーム対応に関する知識がなかったので、まず一通りお話を伺うと、その過程で、つい同調してしまい一緒になって怒っていました。

「それは私でも怒っちゃうわー。」「そんなことがあったんですね!」などと。
わー、う〜、と表情にも出ていたと思います。

不明点など、時折質問したりして、とにかく理解したい一心。

そのころの私は無意識だったのですが、今は知識があります。
それに照らし合わせてみると『人は感情を理解してもらいたい』ものだとわかりました。

クレーム対応の場面では、状況や言っている内容を理解しようとしていることが多いように感じますが、実はまず『感情を理解する』そのために状況や内容を聴くことが大事です。

それを無知なころの私は天然でやっていたようです。
会社を代表して行っているので、本当は一緒に怒ってはいけない立場ですよね?
でも、話を聴くとつい同調してしまう癖があったのです。

感情を理解し、一緒になって同じ感情になっていると「まぁ、でもヘルパーさんも悪気があってやっていたわけじゃないしね。」なんて相手から言ってくれたりもします。

そこで「こんな状況でも、慮ってくださる心に救われます。ありがとうございます!」なんてまた同調します。

とにかく、聴き続け、同じ感情になって同調し続ける。
感謝できることを見つけて感謝する。

そのころは、そんな風にしていた記憶があります。

最後に「あ!私、会社から来ているから報告書を書かないと行けないんです。どう書いたらいいでしょう?」なんて、無知すぎるゆえに聞いていました。

もうその頃には利用者さんは怒っていないし、感情を理解してくれたという心理的なつながりを感じているのか、報告書を一緒に考えてくれました。

そして、その後ずっと利用してくださいました。

小さな会社でしたので、クレーム研修もありませんでしたし、現場で私がどんな対応をしているか、会社側は知らなかったと思います。

けれど、結果的にいつもどうしてだか、クレームが収まって利用を続けてくださるので、いつも何かあると私が呼ばれる、という流れになっていました。

その仕事を辞めた後、しばらく経ってから『クレーム対応研修』という研修を講師として実施する機会がありました。

その時に、クレーム対応の勉強をして、初めて「あぁ、あの頃、私はクレーム対応をしていたんだ。」と気づいたんです。

気づくのが、遅すぎますよね?

ファンになってしまうクレーム対応のコツ

さて、一般的なクレーム対応で言われることは棚の上に置いておいて。
ここでは、実際に解決し、顧客の流動もなく、対応した本人もストレスに感じなかったコツを2つご紹介します。

1.興味に集中すること

「怒られるの嫌だなぁ。」などと意識を自分に向けるのではなく「どうして怒っているのかなぁ?」と相手に意識をむけ、興味を持つこと。

どうして、この人は怒っているんだろう?何があったんだろう?と相手に対する興味に集中する、それが相手に伝わります。
「この人は、話を聞いて理解してくれようとしている。」
それが伝わることが第一歩。

この感覚がなければ難しくなるのだと思います。
自分自身が何かを理解してほしい、という時を想像してみてください。
たとえ相手の言葉遣いがどんなに丁寧でも、理解しようとしてくれていないと感じたら、すごく気分が悪いものですよね。

2.自分らしくあること

クレーム対応だからと、別の自分になる必要はありません。
ありのままの自分で接したらいいと思います。

『自分に対するクレームではないのだから、自分が傷つかないように、会社の殻をかぶって自分を締め出してマニュアル通りに対応したらいい。』と考える方もいらっしゃるのですが。
逆に大変だと私は思います。

なぜなら、そうすると「もっとわかって!もっとちゃんと理解して!話を聞いて!」というふうに相手がエスカレートしてしまう可能性があるからです。
実は、いつも通りのコミュニケーションがものをいうクレーム対応。
普段の仕事や生活の中でどんなコミュニケーションをとっているか?それが試されるのだと私は感じています。

明らかなクレーマーではない限り、相手に興味を持って、とことん聴き、感情を理解し続けると・・・
最後には、相手から「会社に対して不満なだけで、あなたに対して言っているわけではないんですよ。」「ちゃんと理解してくれてありがとう!」「癒されました。」などという言葉を言ってくれます。

クレーム対応ほど『聴く力を磨く』絶好の場面はないかと思います。聴く力を磨くことは、他のどんな場面でも有効です。
コミュニケーションの『元』ですから。

だから『クレームを対応している。』という意識をまずはやめて。
相手に興味を持ち、とことん聴き、感情を理解し続ける。
それは、クレーム対応ではなく自分の『聴く力を磨くチャンス』なのです。

場数を踏むことで、コミュニケーション能力が磨かれて仕事に多いに役立つはずです!
ぜひ、クレームを担当する社員さんに、お伝えしてみてくださいね!