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益田 和久

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第256回 「ボーダレス化」する小売業から学ぶ、個別最適化とOMOの未来

2026/01/29

先日、日本経済新聞に掲載された小売業界の勢力図に関する記事が目に留まりました。
かつては明確だったコンビニ、スーパー、ドラッグストアという業態の垣根が消え、顧客の「奪い合い」が激化しているという内容です。

特に注目すべきは、ドラッグストアが食品販売を強化してスーパーの領域を侵食し、一方でコンビニが冷凍食品や日用品を拡充して「近くのスーパー」としての役割を担い始めている点です。
消費者の利便性を追求した結果、街中の至る所で「ボーダレス化」が起きています。
この記事を読みながら、私は人材育成やマーケティングにおける「デジタルとアナログの融合」の重要性を改めて考えさせられました。

このように業態が混ざり合う中で、各社が生き残りをかけて注力しているのが「顧客の囲い込み」です。
その中心にあるのは、もはやプラスチックのカードではなく「スマホアプリ」です。
アプリのダウンロード数が飛躍的に伸びているのは、消費者がそこに明確な「価値」を見出しているからに他なりません。
クーポンのお得感だけでなく、自分の購買履歴に基づいた便利な情報の受け取りなど、実利が伴っている証拠です。

かつてのように、新聞の折り込みチラシを大量に撒いて、最大公約数的なターゲットに働きかける時代は終わりました。
現代は生活様式が多様化しており、一律のアプローチでは響きません。
今求められているのは、徹底した「個別アプローチ」です。
会員証アプリを通じて個人の購買行動を可視化し、その人だけに最適化されたクーポンや情報を配信する。
これは、まさにデジタルの力を活用した「個別最適化」の最たる戦略です。
消費者のペルソナ(人物像)を深く理解し、さらに精度の高いアプローチを行うために、企業が今後どのような手法でデータを収集し、分析していくのか。
この進化の過程には非常に興味を惹かれます。

記事の中で最も私の心に響いたのは、「今後はOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)が大事になる」という一節です。
これは、私が本コラムで繰り返しお伝えしている「デジタルとアナログの使い分け」というテーマそのものです。
小売業において、オンライン(アプリでの集客や分析)とオフライン(実店舗での体験)を融合させるように、人材育成の世界でもこの融合が欠かせません。
例えば、eラーニングやAIを使った自主学習(オンライン)で知識を個別に習得し、その上で対面でのワークショップや対話(オフライン)を通じて深い気づきを得る。
どちらか一方が優れているのではなく、それぞれの良さをどう引き出し、組み合わせるかが成果を分けるのです。

マーケティングの手法は凄まじいスピードで進化しています。
BtoC(対消費者)であれ、弊社の主戦場であるBtoB(対企業)であれ、デジタルのフル活用は今や避けて通れない必須条件です。
しかし、データやアルゴリズムを突き詰めていけばいくほど、最後に行き着くのは「人間」です。
数字や履歴の背後には、必ず感情を持った一人の人間がいます。

どれだけテクノロジーが進化しても、私たちは「生身の人間」を観察し、対話することを忘れてはなりません。
顧客が何を求めているのか、部下が何に悩んでいるのか。
その微細な変化を感じ取り、心を通わせるアナログなマーケティングやコミュニケーションこそが、デジタル全盛の時代だからこそ、より一層の価値を持つのではないでしょうか。
オンラインという強力な武器を使いこなしながらも、その先にある「人」の本質を捉え続ける。
そんなハイブリッドな視点を、これからも大切にしていきたいと感じる今日この頃です。

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