2026年3月、ANAホールディングス傘下の新ブランド「AirJapan」が、わずか2年余りで運航休止を迎えました。
私自身、先日のアジア出張でバンコク行きの便(ラストフライトのひとつ前の便でした)に搭乗し、到着前の機内アナウンスで乗務員の方が感謝の思いを涙まじりに語る姿が強く印象に残っています。
この体験は、本事業の持つ意味を象徴しているように感じました。
AirJapanは、フルサービスとLCCの中間に位置する“第3のブランド”として設計されました。
ボーイング787を活用しつつ、サービスは選択制、価格は抑えるというモデルは、訪日客と日本人双方の需要を取り込む合理的な戦略です。
実際、約100万人の利用実績や最終便の高い搭乗率が示す通り、顧客価値の仮説は十分に成立していたといえます。
それでも運航休止に至った背景には、「戦略の失敗」ではなく「経営資源の再配分」という意思決定があります。
ロシア上空回避の長期化や機材供給の制約により、航空業界は再び供給制約型の産業となりました。
その中でANAは、より収益性の高い長距離国際線へリソースを集中させる判断を下しました。
AirJapanは役割を終え、次の成長領域へ資源を移すための整理だったといえます。
注目すべきは、その終わり方です。
現場は最後まで顧客への感謝を伝え、経営は「知見の継承」を明確に打ち出しました。
単なる撤退ではなく、挑戦の価値を組織に残す意思が感じられます。
AirJapanの事例は、新規事業の価値を成功・失敗だけで測るのではなく、「何を残せたか」で評価する重要性を示しています。
続ける判断だけでなく、やめる判断の質こそが、これからの大企業経営に問われているのではないでしょうか。