終売しても、顧客の記憶からは消えない
永谷園は2026年8月、2014年に終売した「マグカップでおしゃれなケーキ モコモコ」を、「マグカップでふっくらケーキ!モコモコ」として復活させます。終売後も再販を求める声は10年間で500件を超え、SNSでは利用者が復元レシピを発信するなど、商品は店頭から消えた後も愛され続けてきました。
企業は商品を販売していますが、顧客が手にしているのは、機能や味だけではありません。マグカップに材料と卵を入れ、電子レンジの中でケーキが膨らむのを待つ時間。そこには、子どもの頃の驚きや、家族と過ごした風景まで一緒に記憶されています。長く愛される商品は、暮らしの一場面に入り込み、やがて個人の物語の一部になるのです。だからこそ、販売が終了しても、顧客の心の中では終売していなかったのでしょう。
今回の復活で注目したいのは、懐かしさだけに頼らず、令和の生活に合わせて商品価値を捉え直した点です。時短、食育、手頃な価格といった現在のニーズを踏まえながら、卵一個、電子レンジで二分という商品の核は残しました。過去をそのまま再現するのではなく、変える部分と守る部分を見極めています。
また、SNS担当者が顧客の声を社内に届け続けたことも見逃せません。SNSは単なる宣伝媒体ではなく、埋もれた顧客資産を発見し、組織を動かす装置にもなります。企業にとって終売商品は過去の在庫ではなく、未来の事業機会なのかもしれませんね。