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星 寿美

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第23回 いい風土=仲良しクラブではない!

2021/09/19

人間関係を解決し、関係の質をあげれば、成果が上がる自走組織になる!と私はお伝えしていますが、それは『仲良しクラブ』を作るわけではありません。

『関係の質を上げる=仲良し』ではない、という事と『どういう組織だと成果が出るのか?』も合わせて説明します。

その説明をするために、適切な図を見つけました。下記の図をご覧ください。

ブリリアンス型と仲良しクラブ型の違いを、上の表で見比べてみてください。
目指すべきは『ブリリアンス型』だということがわかりますね。

私はずっと『ブリリアンス型』の組織を育成していたのだと、この表を見て実感しました。

私が提唱・実践し、成果をあげている自走組織はまさに、組織を『ブリリアンス型』にした上で、ゴールツリー会議を実施し、組織で成果を上げる!というものだからです。

では、どうしたら組織を『ブリリアンス型』にすることができるのでしょうか?

大切なのは『経営者の在り方』です。

さて、風土を作るのに大切なのは、まず経営者の『在り方』です。
『誰が』やっているか?で見えない風土、雰囲気は作り出されるからです。

その次に、関わり方や制度などの『やり方(仕組み)』です。この順番が非常に重要です。
実例で説明します。

経営者の福田さん(仮名)から『関係の質をあげて自走組織にしたい!』という希望がありました。
そこで私は、いつものように、経営者と社員全員の面談を実施しました。

福田さんは、心から『関係の質をあげて自走組織にしたい!』と望んでいましたが、話をしてみると、社員のことを全く信頼していませんでした。

もちろん口では「社員を信頼している。感謝している。」と言ってはいるのですが心の底では全く信頼していなかったのです。

そして、その『在り方』のまま、今まで何名ものコンサルタントに頼んで、例えば『成果を上げるための会議』『リーダー育成研修』『個別コーチング』などを取り入れては、うまくいかない!ということを繰り返していたのです。

あげくに「こんなに経費や時間をかけているのに、うちの社員のレベルが低いんだ!」とまで言うようになりました。

本当に、社員たちのレベルが低いのが原因でしょうか?
実は『原因』は、福田さん自身の『在り方』でした。

私は毎週1時間、時間をとっていただいて、福田さんとの個人面談(深い対話)を続けました。

その面談(深い対話)で、誰もが持っている『思考癖』と、どうして、その『思考癖』を身につけたのか、プロセスにも気付いていただきました。

そこに自ら気づけると、改めて思考を選択できるようになります。

自分の思考癖という『フィルター』を通さずに社員を観ること。そして、そのフィルターによって『いい・悪い』で判断し社員をジャッジするのではなく。
『活かせること』や『素質・才能』にフォーカスした観方ができるようにサポートしました。

同時に『恐れ・不安』に向き合っていただきました。この『恐れ・不安』が『フィルター』に影響すると言うことを実感していただきました。

『在り方』は、目には見えない部分ですし、無意識の領域が影響していることが非常に多いのです。

だからこそ、表面的な対話ではなく、例えば、過去(幼少期や思春期の時代に遡ることも多いです!)の出来事などから身についた無意識の『思考癖』があることに気付くような対話によって、『思考癖』に自ら気づくことが、第一歩です。

『思考癖というフィルターを通すから、現実がこう見える!』と言うことが実感できるまでの『深い対話』を繰り返すことで、本来の『在り方』に戻っていき、経営者としての『軸』がブレなくなります。

福田さんの場合は、口では「私は社員を信頼している。」と言い、そう思い込もうとしていましたが、全く信頼していないことに、対話によって自ら気づかれました。

それが『いい・悪い』ではなく、ただ、そういう状態だったと素直に思えた、と言うことです。

そのような『在り方』で、どんな仕組みを導入してもうまくいくはずはありません。
言うことよりもやることよりも、在り方が人に強く影響するからです。

例えば、口で「お前を信頼している。」と言われても、もしその相手が全く自分のことを信頼していなければ、すぐ分かりますよね?

信頼なんてされていないのに「信頼している」って言われたら、その人のことを信頼することはできません。
逆に「お前のことは信頼していない!」と本心を伝えてくれた方が、内容にショックを受けても、その言葉を信じることはできます。

だからTOPである経営者という立場は、いつも『在り方』『人間性』を試されているし、社員のおかげで『在り方』『人間性』を磨き続けることができます。
これは親子や教師生徒などでも同じことがいえますが、経営者は特にです。

組織が同じ目標に向かって成果をあげ、成長・発展し続ける使命があるからです。

『在り方』の元になる『思考癖』に気づくには?

『仕組み』よりも『在り方』特に経営者の『在り方』は影響大だとご理解いただけたことでしょう。

さて福田さん。『在り方』が明確になり、『軸』がブレなくなったこと。
そして同時に『社員面談』と『ゴールツリー会議』を実施したことで、一人一人がやりがいを感じ同じ目標に向かう『ブリリアンス型』の自走組織に成長しました。

では、どうしたら『思考癖』に気づき、本来の在り方に気づき、ブレない軸を作れるのか?

実は、思考癖はどんなに一人で考え悩んでも、なかなか抜けることができません。
なぜなら『思考の枠』の中でもがいているだけだからです。

自分を客観的に見つめ、選択し直すためには『思考の枠』の外に出る必要があります。
思考の枠の外に出るためには、Yesマンや、似たような思考の人と話すのではなく、

『ありのままを受容しながら、深い対話ができる人と対話する。』

と言うことが解決の一つです。
さらに、自分が『ありのままを受容する聴き方』をしてもらう体験をすることで、誰かに対してもそれをすることができるようになります。

『体験』せずに、誰かに対して「ありのままを受容しましょう。」って難しいことです。
ちなみに、ありのままを受容するとは、相手の意見に共感したり、賛同したりすることとは全く別のことです。このことについては別記事で詳しくお伝えします。

まとめると、経営者の『在り方』が土台にあって、その上で実施する『仕組み』がある。その両輪で組織を育成することが大切だということ。

そのプロセスで経営者の『在り方』『人間性』が磨かれ、経営者の器が広がり、組織が大きく成長します。

図出典:『日経トップリーダー2019年6月号』 日経BP社