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星 寿美

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第39回 “怒っては自己嫌悪”の社長が変わった理由とは?

2022/01/09

IT会社40代のI社長は、いつも社員にカミナリを落としては自己嫌悪を感じていました。

「あぁ、またやってしまった!あんな言い方をしてしまったら下はついてこないのは知っている。でも怒りを抑えることができない・・・」

今回は、そんなI社長が変わった、たった一つの理由をご紹介します。

上記のような組織運営に悩んで相談に来られたIさんに私は、

「怒るのは良くないことだと思っていませんか?」と聞きました。

I社長は「良くないに決まっているじゃないか。もっと冷静に伝えることができたらどんなにいいか。でも、それが難しいんだ。」

以下、その時の対話です。

私:「なるほど、怒ることはいけないことだし、冷静に伝えたいと思っているんですね!怒りを一切抑えることなく、自然に、冷静というか普通に伝えることが簡単にできますよ!」

I社長:「え?怒りを抑えずに?抑えなかったら爆発してしまうじゃないか!」

私:「抑えようと頑張っても爆発しているんですよね?」

I社長:「た、確かに・・・、でもそれは自分の努力が足りていないからでは・・・」

私:「そこ、努力するポイントじゃないですよ。例えば、直近で社員にカミナリを落としてしまった状況を教えてください!」

I社長がその時の状況や、それまでの経緯を詳しく教えてくれました。
そして、怒りが爆発してしまった時の感情を思い出していただきました。

ありのままの感情を受け入れる

「まず、自分がものすごく怒っているのだと感じてください。怒ってはいけない、などと思わずに、ただ怒りを感じてください。」とお伝えしました。

いい悪いなどのジャッジを手放して、ただ感情を感じているI社長に私はいくつか質問をしました。

・『自分は本当に怒っている!』ってありのままを受け入れた今、どんな感じがしますか?
・その怒りの感情はどこからやってきたと思いますか?
・怒りを感じるきっかけはなんだったのですか?
・どうして、そのきっかけによって怒りを感じたのでしょう?
・本当はどうして欲しかったのですか?
・本当に相手に伝えたいことはなんですか?
・本当は何を大切にされているのですか?

この時、I社長は、怒ることに『いい・悪い』というジャッジをすることなく、ただ怒りを感じたことを受け入れて、そこから質問に対する、自分の内側を言語化していきました。

すると、最後に出てきた言葉は、

「仲間を大切にしたい!この会社の社員はみんな仲間、家族なんだ。だから他人事のように適当に仕事をされたり、愚痴ばかり言って何もしようとしない、その心根が悲しかった。相談して欲しかった。関わって欲しかった。」

このように、怒りの元は『悲しい気持ち』であることが多いのです。そして、ただ自分の本当に大切にしている価値観を(相手の起こしたキッカケによって)自分自身が言語化できていなかったことに気づいていきました。

怒りを感じるたびに、このような深い対話を繰り返しました。

しばらくすると、I社長の口から「怒りはいけないことではなく、むしろ、本当に深いところにある、自分の大切な価値観を言語できるきっかけなんだね。怒りは自分に気づくことができる・・・そう!親友だ!」という言葉が飛び出しました。
その言葉を聞いた時、私はすごく嬉しく感じました!

怒りという感情は大切にすべき羅針盤

怒りの感情は抑えたりコントロールしたりするものではなく、ただ、本当に自分が大切にしている価値観(自分自身)を言語化できる、羅針盤です。

とても大切にすべき『感情』なのに、現代は怒りをコントロールしたりマネジメントするという概念が主流・・・

なぜなら、私たちは感情を大切にするという概念もやり方も教わっていないからです。
小学校・中学校・高校・大学。
親からも社会からも学んでいないのです。

だから、ただ『知らないだけ』『未学習』だというだけです。
それは、今までの時代が成長期や安定期だったから。
今までは、言うことをよく聞く工員タイプを育てる教育が主流でした。
その時代の求める人材は「専門性を高め、言うことをよく聞く人材」でしたが、今は『理想の答え』が一つではありません。

現代社会は何が起こるか予想できない不安定な時代です。
だから教育そのものを変えないといけないのです。
もう表層をなんとかすればいいとか、理想の答えが一つという時代はとっくに終わっています。

同じように、怒りという感情を表面的に抑えても、何も解決できません。
怒りを抑えた本人もストレスが少しづつ溜まっていくし、相手にも真意が伝わらず怒りの感情だけが伝わってしまう。
いいことなし!なのです。

しかし、I社長のように、怒りを抑えるのではなく、またマネジメントするのでもなく、ただ自分の感情をありのままに受け入れて、そこから自己対話をすることで、怒りを羅針盤に、本当に大切にしている、でも気づいていない価値観を言語化できます。

その“言語化”を伝え合うことで、私は多くの『こじれにこじれて修正不可能』と言われた対立を根本解決してきました。

なので、多くの人が怒りの感情を大切にできたら、もっと人間関係がよくなり、創造的な社会になる!と私は日々の仕事で実感しています。

そのために今、怒りに対する本を執筆中!来年出版予定です。
たくさん事例をご紹介していますので、どうぞお楽しみに!

I社長から次の言葉もいただきました。

「最近は怒りたくても怒る理由がほとんどない。怒りを否定していた時は、怒りを感じては怒らないように冷静にと頑張って悪循環を至るところで起こしていたけれど、怒りをありのまま受け入れて大切に扱ったら、こんなにも状況が激変した。これは小学校で学ぶべき大切なコミュニケーションの基本だと思う。」

I社長が変わったたった一つの理由

『怒りはコントロールするのではなく大切にすることだ!』と知ったこと。

怒りの感情を抑えようとしていた(怒りはいけない感情と思っていた。)から、怒りの感情をありのまま受け入れて自己対話し、自分の深い想いを言語化するようになった。

これだけなのです。人はコントロールをしようとすると抵抗します。自分に対しても人に対しても。
でも、ありのままを受け入れて、本当の自分を明確にしていくことは喜びなのです。
努力は何もいらない、とてもシンプルな過程です。

怒りはコントロールするのではなく大切にすることだ!と知ったこと。それがたった一つの理由です。