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星 寿美

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第44回 『褒める・叱る』の弊害

2022/02/13

「部下にどう褒めたらいいのか、どう叱ればいいのか、難しい。」と言う声をよく聞きますので、今回はそれについての回答をまとめます。

私の答えは『褒めることも叱ることも必要ない。』です。それは、どういうことなのでしょう?

(第14回の記事で『人財育成に褒める・叱るは必要なし!』という記事を書いていますが、今回は少し違う角度からまとめます。)

感じているままを、そのままお伝えするだけ!

以前の記事にも書いたのは、褒める・叱ると言う意識の中には、相手へのコントロールする気持ちが含まれている場合がある、と言うことです。

・褒めてやる気を出してもらおう!
・叱って、ちゃんとしてもらおう!

などです。

深層心理のそのような『コントロール』を相手は敏感に感じ取っています。
そして、誰もが人からコントロールされるのは嫌なので、褒めているのに、または叱っているのに『動かない。』で、悩んでいるリーダーは多いです。

なので、褒める・叱るなどの意識をせずに、ただありのまま感じていることをお伝えするのが、一番です。

プラスのことを感じている時

相手の良い面に気づいて感じていることをお伝えするときには、そのままお伝えしてください。

ただ感じるままに、

「気づいてやってくれて、本当に助かったよ。ありがとう!」
「お客さまから、あなたの接客がいいって聞いたよ。その調子で頑張って!」
「いつも部下への伝え方に悩みながら丁寧に取り組んでくれていると私は感じているよ。」

など、本当に感じるままに発している言葉は、ストレートに相手の心に伝わり、嬉しく感じるものです。

マイナスのことを感じている時

「そんなんじゃダメだ!もっと丁寧に。」
「言われたことをただやるんじゃなくて、もっと自分で考えろ!」
「どうして、何度言ってもわからないの?」

など、マイナス面で感じていることを伝えるときに、相手へ意図が伝わりやすいコツが2つあります。

①必ず、主語を自分にして、相手のことは相手に質問をする。
②よりよくなるために、何が必要かを、相手に考えてもらう。

この2つです。やってみるとわかりますが、とても簡単なコツです。
1つずつ解説します。

①必ず、主語を自分にして、相手のことは相手に質問をする。

これは、マイナスのことじゃない場合でも言えることですので、いつも心がけているといいでしょう。

「あなたは、こうだ!」「あなたってこうよね。」と相手を主語にして話す習慣がついている方が多いのです。
人のことは誰もわかりません。
たとえ、そうにしか見えないことでも、実際には全く違うことは多々あります。

例えば、どう見ても『やる気がなくてサボっているようにしか見えない態度や行動や言動』であったとしても、その人の内側で起こっていることはわからないのです。

なのに、表層面だけをみて「あなたはこう」って決めつけてしまうのは、もったいないのです。
何がもったいないのか?というと。

例えば「何サボってるの?ちゃんと仕事してください!」と決めつけてしまうと、本当にサボっていた人からは、保身のための言い訳が。
そして、理由がある人が、たとえ説明したとしても言い訳にしか聞こえなくなってしまいます。
結局真実が全くわからず、こちらが相手を理解することができず、関係性が築きにくくなります。
だから、すごくもったいないと私は思うのです。

そして、何もジャッジせずに、

「私からはサボっているように見えるけれど、本当はどうなの?」

と聞くと、相手には「あ!私の態度はサボっているように見えるのか。でも、本当はどうかをちゃんと聞いてくれている。」と感じて「実は・・・」と本音を伝えてくれるかもしれません。
また、本当にサボっていたとしても「サボってました。すみません。」と素直に話してくれるかもしれません。

このように「私からはこう見えるけれど、本当はどうなの?」「私はこう考えるけれど、あなたはどう?」などと『主語をいつも自分にする』だけで、相互理解が深まり、対話が生まれ関係の質が上がります。

②よりよくなるために、何が必要かを、相手に考えてもらう。

さらに、こうしなさい!と指示命令するよりは「さらに良くなるために、何が必要かしら?」「どうしたらさらに改善できる?」など、必要な視点や行動を相手に考えてもらって引き出します。

人から言われたことをするのは「やらされ感」がありますが、自ら発した言葉は、自然にやろうとします。

もちろん、ルーティンや仕事上決められたことなどは、明確に指示命令をし、できるように教育する必要がありますが、在り方(マインド)や行動などについては、相手の内側から引き出すコミュニケーションをすることで、指導も楽だし、成長も早くなります。

対話を深めて、相手に気づいてもらうことは、人を気持ちよく動かす最大のコツでもあります。

まとめ

ということで、タイトル『褒める・叱るの弊害』とは、その意識があることで、相手との関係を築く機会や、相手の成長の機会を奪ってしまいかねない、ということです。建設的ではないのです。

人のことは(どんなにそう見えたとしても)実際には誰にもわかりません。
だから、主語を自分にして感じているまま言葉にして伝えること、そして相手のことは相手に聞く。
してほしい行動があれば、それを相手から引き出す。
それが、自分も相手も気持ちよく、人を動かす/人を成長させる『基本のキ』です。

ぜひ、心がけて実践してみてくださいね。これまでのコミュニケーションから得られた結果との違いを感じていただけると嬉しいです。