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益田 和久

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第253回 AI時代だからこそ自問自答とコミュニケーションを

2026/01/08

新年早々に読んだ記事で、思わず「まさに!」と声が出てしまったものがあります。
2023年夏の甲子園を制した慶応義塾高校野球部の森林貴彦監督へのインタビュー記事です。
α世代(2010年代前半以降に生まれた世代)の特徴や、彼らに対する教育のあり方について語られていたのですが、これが人材育成の現場にいる私にとって、とても示唆に富む内容でした。

まず驚いたのは、既に世の中はZ世代対応からα世代の話になっていることです(苦笑)。
私たちがようやくZ世代の特性を理解し始めたと思ったら、もう次の世代が主役になりつつある。
教育や人材育成に関わる者として、常にアンテナを高くしておかないといけないということでしょう。

森林監督も指摘していたように、若い人たちはタイパ(タイムパフォーマンス)を重視し、すぐに答えや結果を欲しがる傾向があります。
私が担当している思考力強化研修でも、しばらく考えるように伝えても、すぐに答えを聞きたがったり、少し考えて分からないとあっさりあきらめてしまう姿を目にします。
一方で、森林監督は若い人たちの「情報の収集力、検索力、感度、取捨選択力はすごく高い」とも認めています。
この能力は、私たち大人世代が見出せていない部分かもしれません。

記事の中で最も印象的だったのは、森林監督のこの言葉です。
「AIが教えてくれるのは『答え』ではなく『答えらしきもの』だ」。
これは素晴らしい表現だと思います。生成AIは確かに便利で、質問すれば瞬時に何らかの回答を返してくれます。
でも、それは「答えらしきもの」であって、絶対的な正解ではない。
最終的に意思決定するのは、全て自分自身なのです。

だからこそ、森林監督が強調する「AIに頼らず自問自答する経験」の重要性は、若い人たちに、いや全ての世代に伝えていく必要があると思います。
自分はどういう人間になりたいのか。
何を大切にしたいのか。こうした問いに対する答えは、自分で考え、悩み、試行錯誤する中でしか見えてこないものです。

とはいえ、これを若い人たちに伝えるのは難しい面もあります。
パワハラや体罰を恐れるあまり、親が子供に、先生が生徒に、上司が部下に、何も言えなくなってしまっている現状があるからです。
年末年始にドラマ「不適切にもほどがある」を見て、次世代への「大事なことの伝え方」について改めて考えさせられました。
本当に大切なことは、たとえ嫌がられても、理解を求めていく姿勢が必要なのではないでしょうか。

もう一つ、森林監督の言葉で心に残ったのは、「社会では色々な人との共働、共創が重要になる。
これはAIが教えてくれることではなく、人とコミュニケーションを取りながら覚えていくもの」という指摘です。
まさにその通りだと思います。
AI時代だからこそ、人と人とのコミュニケーションを積極的に図り、協働・共創していくことが必要なのです。
森林監督は「横一列でみんなと同じことをやっているだけではAIを超えられないし、AIに取って代わられてしまう」とも述べています。
自分の強みを追求していく経験、一人ひとりがそれぞれの形で輝くという経験こそが、将来の付加価値につながっていく。
これは、人材育成の本質を突いた言葉だと思います。

ここで私が強く感じるのは、私たち大人の責任です。
AIとの向き合い方を、未来的視点で決めていくのは、今を生きる大人たちの役割です。
「どの部分は人間がやるべきなのか」「AIに任せることで何を得て、何を失うのか」を、きちんと考え、若い世代に伝えていかなければなりません。

2026年、私自身も研修の現場で、お客様やビジネスパートナーとの対話の中で、このテーマに向き合い続けたいと思っています。
AI活用を推進しながらも、自問自答することの大切さを伝えていく。
効率化を図りながらも、人と人とのコミュニケーションの価値を説いていく。
そして、私たち大人が、AIとの向き合い方の「道しるべ」を示していく。
そんな一年にしたいと感じている今日この頃です。

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