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益田 和久

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第259回 「デジタル民生委員」が支える、高齢者スマホ利用の未来とリアルの価値

2026/02/19

先日、日本経済新聞に「60〜70代、スマホ契約『店頭』8割 キャリアショップ、3年で1割減」という興味深い記事が掲載されました。
記事によると、MMD研究所の調査で60歳以上の約8割がスマホを店頭で契約しており、その主な理由は料金プランの複雑さやオンライン手続きへの不安にあるといいます。
一方で、大手キャリアは人件費削減を背景に店舗数を3年間で1割(約1000件)減らしており、手続きのウェブ移行を加速させています。
この「対面ニーズの強さ」と「店舗の減少」のギャップは、高齢者の情報格差(デジタル・デバイド)を広げる新たな社会問題となりつつあります。
今回は、私自身の身近な経験を交えながら、これからの高齢者とデジタルの向き合い方、そしてそれを支える「仕組み」について考えてみたいと思います。

私自身、昨年母を亡くした頃から、高齢者のスマホ利用についてより切実に考えるようになりました。
私の父は88歳で、遠距離での一人暮らし。
耳が遠く、根っからのアナログ派です。
電子辞書だけは何故か使いこなせるのですが、スマホに関しては長らく通話専用機としてしか認識していませんでした。
亡き母は、死期が近くなった際、父が一人になっても困らないようにと「お父さんにスマホ操作を覚えさせて」と、私にも父にも遺言のように言い残しました。
その思いに応えるべく、私は父の使うAndroid端末の操作を教えるため、「東京スマホサポーター」の資格取得に向けて勉強を始めました。
しかし、実際に帰省して教えてみると一筋縄ではいきません。
大前提として、「本人が必要性を切実に感じている機能」でないと、なかなか身につかないのです。
たまにしか使わない機能は、次に行った時には綺麗さっぱり忘れられています。
こうした層にとって、オンラインチャットや電話の自動音声ガイダンスによるサポートは、もはや「異次元の難易度」です。
父のような状況にある高齢者は、世の中に膨大に存在するはずです。


日経の記事にある通り、キャリアショップに足を運ぶ高齢者が多いのは当然の流れでしょう。
先日、私も近くのドコモショップを覗いてみましたが、店内は相談を待つ高齢者の方々で溢れかえっていました。
彼らが求めているのは単なる設定作業ではなく、「自分の困りごとを1対1で聞いてくれる安心感」です。
しかし、効率化を優先するキャリア側は、手数料の値上げやウェブ誘導を強めています。
足が不自由だったり車が運転できなかったりする高齢者にとって、近所の店舗が消えることは、社会との接点を失うことに等しいのです。
記事の結びには「店舗の代替となる支援、来店しなくても使いこなせる仕組みの整備が必要だ」とありました。
私は、こここそが今後の社会設計、ひいては人材育成の観点からも極めて重要なポイントになると確信しています。

では、どのような仕組みが必要なのか。
私は、かつて平井卓也衆院議員も提唱されていた「デジタル民生委員」のような存在を、地域ごとに組織的に育成していくべきだと考えています。
現在もキャリアの社員が自治体で勉強会を開催していますが、単発のイベントだけでは日常的なケアには到底足りません。
そこで、以下のようなスキームを構築できないでしょうか。

・ターゲット層の活用: 今の中年層(現役世代)はデジタルへの抵抗が少なく、操作も熟知しています。
彼らがリタイア後、あるいは副業として地域の高齢者をサポートする役割を担う。
・「東京スマホサポーター」の拡充: 私が学んだようなボランティアベースの資格を公的な認定制度にし、地域に配置する。
・持続可能な仕組み: 全てを無償ボランティアに頼るのではなく、自治体からの委託費などで、一定の謝礼(ギャラ)が発生する仕組みにする。

これは単なる操作説明の代行ではありません。
高齢者の「自問自答」を支え、孤独を防ぐための「対話を通じたコミュニティ支援」です。

私がこのコラムで一貫して伝えてきたのは、「オンラインは対面の価値を高めるためのツールである」ということです。
スマホが本当に高齢者のような弱者に役立つ場面とは、単に決済ができることではなく、それを通じて家族と顔を見て話し、地域とつながり、自らの「生」を豊かにできる状態を指します 。店舗が減っていく時代だからこそ、私たちは「デジタルの知識」と「地域への愛着」を兼ね備えた人材を育てなければなりません。
弊社としても、こうした「デジタル民生委員」の育成プログラムや、自治体への提案を通じて、この課題に積極的に関わっていきたいと考えています。
テクノロジーの進化を、誰一人取り残さない優しさへと変換していく。
そんな血の通ったDXのあり方を追求していきたい、と感じる今日この頃です。

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